一語一映Ⅲ

高知市の美容室リグレッタの八木勝二が、映画や本のこと、ランチなど綴ります。

ヒッチコックのちょっと変わったこだわりサスペンス3本立て「ロープ」「ハリーの災難」「サイコ」

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★★★★・・・絶対オススメ 
★★★・・・一見の価値あり
★★・・・悪くはないけれど・・ 
★・・・私は薦めない 
☆・・・おまけ

※本編の内容に触れる個所がありますから、観られていない方は、ご注意ください。


ヒッチコックの「サイコ」という代表作ができるまでの難産の背景を描いた映画を見ました・・・

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 「ヒッチコック」をDVDで見てからというものの、 「サイコ」を見たくなり、見たらその前の作品を見たくなり、 「ロープ」1948年、「ハリーの災難」1955年、「サイコ」1960年と3本見てしまいました。

この3本の映画は、従来のヒッチコックの「巻き込まれ型サスペンス」とは一線を画す
変わった実験的サスペンスの3本でした。
ちょっと触れて、鑑賞してみましょう。

【ロープ】

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タイトルもそのもの。
この映画が実験的であるというのは、このタイトルシーンを含めて82分間の映画が1カットで構成されているように見えることです。
今なら、82分全編1カットは、デジタルのハードディスク撮影等で可能かもしれませんがこの時代、フィルムの連続撮影できる限度は約10分強でした。

で、どうやって1カットのように見せるかなんですよね。

場所はもともと舞台劇の1幕ものからですから、マンションの1室だけです。

その中を登場人物が入れ代わり立ち代わり動き、またはカメラが追いかけ撮影されたものです。

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こんな感じのシーンが多く続きます。

ロープで殺人を犯した部屋に恋人や両親、舎監らを招き、死体を隠したチェストの上に料理を置いてパーテイを開くという少し倒錯した主人公の物語です。

苦労するのは10分のつなぎ方です。
よく見ていると、普通にカットでつないでいるところが3箇所ありました。

そのほかの5箇所は、人物の背中で画面が暗くなっさたままフィルムが変わり、その人物の背中が遠ざかっていくシーンから始まりつながっているように見せるシーンが4つ。

あと一つはそのチェストを開けたとき画面が真っ暗になり、開けるシーンにつながるという巧妙な繋ぎ方でした。

ほぼ舞台劇です。

でも緊迫した芝居と、セットを可動性にして動かしながら撮影したというエピソードを聞くにつけ、ヒッチコックの並でないこだわりぶりが伺えます。


ここから、ヒッチ=J・スチュワートも出発します。

驚きの「1カット・サスペンス」なのです。ごらんあれ。★★★

【ハリーの災難】

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ヒッチコックの有名でない作品特集で上映された2本なんですね。

監督ヒッチコックは、このコメディタッチの一応サスペンスを大好きな1本としているようです。

紅葉の季節を迎えたバーモント州のある小さな村。
森の中でハリーという男の死体が見つかる。
村では様々な理由で「自分がハリーを殺してしまったのでは?」と思い込む人物が何人もいたため、彼らはそれぞれの保身のためにハリーの死体を埋めたり掘り返したりすることになる。
やがて村の保安官が動き出し、事態は意外な方向へ展開していく。


ネットに出てくるスートリーです。

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登場人物みんなが、自分がハリーを殺したと思っている。
その思いをコメディタッチで描きながら、住民の保安官に見つからないように、埋めたり掘ったりという面白さ。


タイトルにもなっているハリーは少しだけ画面に映るだけ、というユーモアもいいですが、「ハリーの災難」とは殺されたことではなく、靴を盗まれたことだけだったという超ブラックユーモアは、もヒッチならではのひねりです。

 

これまたかわった「全然怖くないサスペンス」でしたよ。 ★★★

【サイコ】

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ポスターを見ると、ふたりの女性と若い男性が主演の物語に見え、監督・ヒッチコックがなんでこんなに大きく出ているのかが不思議な構図です。

これは、きっとすべてを秘密にすることで、「ヒッチコックの知らない世界」への誘いという意味合いのポスターなんだろうと思います。


多くの人が、この映画の秘密を知っています。

僕自身も結末を知っていてみました。

それでも怖いし、意表をつかれます。


だいたい主演のジャネット・リーが殺害されるシャワーシーンが全編のほぼ真ん中の50分すぎなんです。

ジャネットの恋の逃避行物と思わせておいて、その殺害者の物語に後半を持っていくというやり方は、余りにも意表を突いたやり方で、この仕掛けに一番驚きます。

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映画史でもっとも有名と言ってもいいかもしれないシーンですね。

カットのつなぎのマジック、当時の映倫ギリギリの映像、今でもサイコ的シーンには
使われる音楽とも言えない効果音楽。


DVDでは、必ず巻き戻してコマ送りで見るシーンです。素晴らしい編集技術。

そして、後半の恐ろしい結末へ。


謎の全てを一気に収斂してしまうスゴ技にも感服しました。

この作品の前が「北北西に進路を取れ」、次作が「鳥」と、もっとも脂の乗り切っていたヒッチコックの時代の「ありえない展開のサスペンス」でした。

やっぱ、★★★★だなー。



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