一語一映Ⅲ

高知市の美容室リグレッタの八木勝二が、映画や本のこと、ランチなど綴ります。

「父と暮せば」と「母と暮せば」を比較する映画レビュー

両作品の比較

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「父と暮せば」2004年作品、99分、舞台ヒロシマ 1948年8月6日からを描く

監督・黒木和男、出演・原田芳雄、宮澤りえ、浅野忠信

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「母と暮せば」2015年作品、130分、舞台ナガサキ 1948年8月9日からを描く

監督・山田洋次、出演・吉永小百合、二宮和也、黒木華、浅野忠信、加藤健一

 

亡くなったのは・・・

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「父と暮せば」では、ヒロシマで被爆し死亡した父親と、一人残されて生きていくこと、幸せになることを罪悪だと思っている娘の交流が描かれます。つまり父親が「幽霊」というわけです。 

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「母と暮せば」では、ナガサキで被爆してそのまま帰らぬ人となったのは息子のほうで、医学部の学生という設定。母親は助産婦をし被爆からは免れる。つもり息子の方が「幽霊」というわけ、ですね。

「ほぼ、二人芝居」です

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「父と暮せば」は、井上ひさしさんの芝居からそのまま映画化したような映画でしたから、舞台はほぼ被爆した荒れた自宅内。そして娘の独り言に応えるようにおとったん幽霊が出てきて、広島弁で掛け合いをします。

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「母と暮せば」では、長崎の高台にある自宅が多くの舞台ですが、登場人物はもう少し多く、加藤健一さんの演じる「上海のおじさん」や

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息子の許嫁だった町子(黒木華・好演)とのその後や町子自身を通じて時代の空気を描きます。回想シーンがかなり多いのも特徴でした。

演じた俳優さんの年齢は・・・

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何歳の役かは明記されていませんが、宮澤りえさんの役は女子高生だった3年後ですから20歳ぐらいですが、実際は31歳の時に演じています。その父親ですから原田芳雄さんの役はまあ50歳まででしょうが、実際には64歳の時に演じています。

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二宮和也さんの役医学生ですから、これもまあ20歳前後ですが32歳で演じています。吉永小百合さんの役は兄がもう一人いた居た設定ですが時代から見て、45歳ぐらいでしょう。実年齢は70歳という高齢で演じておられます。

両作ともに、浅野忠信さんが・・・

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図書館司書をしている宮澤りえさんに思いを寄せる原爆の資料を集めている男性には、浅野忠信さんが扮していました。

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こちらでも婚約者を失った黒木華さんの婚約者として現れるのは、同じ浅野忠信さんという一致。11年も経て戦争で片脚を失った引き上げの兵隊から教師になった役をこなしています。これは前作へのオマージュなのでしょう。

原爆シーンの怖さ

共にこわいです。
平和な普通の暮らしが一瞬にして消え去ります。
特に、「母と暮せば」のファーストシーンの小倉に落とすつもりが雲が多くて、第2目標の長崎に変更したというシーンだけでも恐ろしいとおののきました。
無音で光り溶けるインクの瓶、これが衝撃的な映像でした。
舞台では出し得ない映画ならではの演出、怖いと思いました。

ラストシーンの対比

「父と暮せば」は、明日への希望を感じさせて終わります。

「母と暮せば」は、母子の魂が一つになることで終わります。

どちらが素晴らしいかは見る人によって違うでしょう。

僕は「父」の方が好きでした。


そして、「母」のラストでは「井上ひさしさん捧げる」という文字で終わり。

一貫して庶民の生活を切り取って笑いとドラマを感動に乗せて作り続けていた山田洋次監督の友情が結実した瞬間だったと思います。

 

P.S.「母と暮せば」の撮影監督は「おとうと」「東京家族」「小さいおうち」に続いて、高知出身のカメラマン・近森眞史さんです。中学・高校時代の同窓でした。彼の撮る夕陽と暗闇の中の表情は素晴らしく出色です。彼のフィルモグラフィ付けておきます。

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