一語一映Ⅲ

高知市の美容室リグレッタの八木勝二が、映画や本のこと、ランチなど綴ります。

ブックレビュー 「三毛猫ホームズの映画館」「劇画・七人の侍」「それはまた別の話」




今回は全部、映画関係の本ばかりです。

『三毛猫ホームズの映画館』


角川文庫から出ているし、タイトルからして三毛猫ホームズシリーズの1作のようですが
実は、大の映画好きの作者の映画エッセイを集めたものです。
「赤川次郎の映画エッセイ」より、このタイトルのほうがしっくり来ませんか?

赤川次郎さんは僕より10いくつ上の方ですが、この本は1980年代に書かれた
映画エッセイや日記のようなもの、感想などが載っていて、僕がリアルタイムで見たものが
今月見た映画で語られ、影響を受けた映画が、回想で語られるので、
出てくる映画のほんんどを知っており、大多数を見ているというとてもうれしい本なのです。

文章は、超ロングベストセラー作家だけにブレがなく、安心して読めますし
何よりも映画の好みが似ているのがうれしいんです。

映画狂になった決め手が、「アラビアのロレンス」だったというだけでも、もう狂喜ものですよ。

大衆におもねる作家ではなく、意見を通せるところが芯の強さなんでしょうね。
ロングセラー作家の真骨頂を見た感じです。
角川文庫絶版ですが、ブックオフで105円で時々手に入ります。


『劇画・七人の侍』


週間少年マガジンに1970年、創刊11周年記念として4回に分けて連載されて以来
一度も本にならなかった「劇画・七人の侍」が43年の時を経て、初の単行本化です。

いつも本屋さんやネットで探していたものだけに、見つけたときの嬉しさは言い表せません。

驚いたのは
?描いたのは平田弘史さんだと思い込んでいましたら、ケン月影さんだということでまた驚き。
?完全にシナリオどおりの劇画であることに驚きました。つまり「公認」ということなんです。

あの3時間27分の超大作をシナリオどおり200ページにまとめていますから
多少飛んでしまう感があるのはしかたないにしても、よくここまで削ぎ落とせた
ものだと、感心すること、しきりです。

今は女忍エロチック時代劇が得意分野になっている作者ですが、気骨は失せていませんね。
講談社から発売中です。


『それはまた別の話』


これは、「キネマ旬報」誌に1年間24回連載された、
舞台の寵児・三谷幸喜さんと、イラストレーターで映画通な和田誠さんが
映画の細部について、2回で1作品ずつ語りつくすという、長マニアックな本なのです。

そういえば二人とも映画監督を数本しておられる。
作り手の大変さも分かるだけに、分析も鋭いものです。

連載時から読んでいましたが、見ていない映画については当時飛ばしていたので
今回全12作品の細部の細部まで読み返してみて、「改めてすごいなぁ」と思ったしだいです。

ひとつは、二人の記憶力のすごさに(特に和田誠さん)。
もうひとつは、映画ってそれだけこだわって作っているんだ、だから名作は永遠なんだ
ということですね。

マニア以外でも、作品の構成作りや
名作の味わい方として楽しめる本ですよ、文春文庫から出ています。