市川崑監督ご生誕100年に市川監督作4作品をスクリーンで一気に再鑑賞する
あたご劇場さん、ありがとう
高知新聞の金曜日の夕刊にいつもあたご劇場さんの小さい広告が載っているのをご存知でしょうか?
1915年11月20日に生まれた市川崑監督のちょうど今日は、ご生誕100年めの日なのです。市川崑監督といえば、生涯現役監督として、たくさんの作品を残し、90歳代まで現役を貫かれた名物監督であります。
一番有名な作品は一般的には「犬神家の一族」でしょうか?
毎年11月の今頃、文化の日にちなんでなのか、国立近代美術館フィルムセンターさんとの共催で、名作4本立て500円入れ替えなし、という催しをやってくださいます。
昨年は女性映画で、山本富士子さん主演の「夜の河」、岸恵子さん主演の東宝版「雪国」、佐久間良子さんの「五番町夕霧楼」、岩下志麻さんの「五辯の椿」という4本立てでしたが、僕は2本目だけしか見られませんでした。
一昨年は成瀬巳喜男監督作品の4本立てで、「めし」「おかあさん」「浮雲」「乱れ雲」と鑑賞しました。
500円ランチが好きという理由とは別に、スクリーンで一度にこんな名作が見られることがないのでとても有難い企画上映なのですね。
さて、市川崑監督の4本立てはご覧の作品です。
「おとうと」「野火」「東京オリンピック」「おはん」実は4本ともスクリーンで見ているという作品ばかりですが「もう一度見たい」と切望するものばかりです。
さて、午前11時から午後7時30分までの8時間半のフィルムマラソン、貫徹できますやら?
あたご劇場とは・・・?
高知で唯一残った常設映画館です。
施設は古くなっていますが、最近デジタル対応にも切り替え、こつこつと高知で上映されにくい映画の公開と、映画文化の向上のために企画上映会や、劇場ごと貸出しなどをして地域文化を担っていただいている劇場なのです。
場所はこちら ⇒ Google マップ
高知のTSUTAYAさんには「TSUTAYA×あたご劇場」というディープなコーナーもあるほどの映画館なのです。
レトロな館内
いろんな割引制度や駐車場サービスが有ります。
月曜はメンズデーで1000円ですが、連れの女性もOKなんです。
金曜日はレディースデー、これも一緒です。
スタートは昭和30年の4月なんですね。
1955年に当たりますから、今年でちょうど60歳還暦なんです。
映画はいわゆる2番館として封切り作品を2本~3本立てで再上映する映画館だったようですね。
お宝だらけの映画館なんですよ。
こんな貴重なもの、飾ってあってもあたご劇場を愛する高知のファンは取って行ったりしません。
4本立てフィルム・マラソン、スタート!!
月曜日の休みに行ったんですが、11時時点で結構な入りです。
年代はというと僕が一番若い?という客層でしたね、笑。
1本めは、
1960年大映作品、キネマ旬報ベストテン第1位作品です。
僕は高校3年生の時始めて観ました。
銀残しという印象的な画面に幸田露伴一家の家庭関係が写し出される、幸田文の名作「おとうと」の映画化です。山田洋次監督の同名作は、「市川崑監督にオマージュを捧げる」とクレジットされますが、設定はやや似ていますが別物です。
お昼は持ち込みのパンとおむすびです。
2本目は、
塚本晋也監督が今年リメイクした戦争の悲惨な一部を冷たく描いた名作です。1959年のキネマ旬報ベストテンで第2位という作品。僕は大学時代に京都の名画座系で観ました。これも原作アリでこの時代の市川監督は文芸モノを得意とし、他に竹山道雄原作「ビルマの竪琴」、谷崎潤一郎原作の「鍵」、三島由紀夫原作の「炎上」、島崎藤村原作の「破戒」、山崎豊子原作の「ぼんち」、松田道雄原作の「私は二歳」などがあります。
「野火」は戦争末期のレイテ島の兵隊が隊の食糧危機のため部隊からも野戦病院からもに捨ててしまわれるという内容です。船越英一郎さんの父・船越英二さんが主演を張り、見事な演技をややコミカルに見せてくれます。人肉を食らうというテーマが有りますが、映画ではユーモラスに表現されています。
チョコも買いますよ、何でも100円で売っています。
3本めは・・・
これは小学校の2年生の時、総見で観た映画ですから、僕が観た約6000本の映画の1本めです。観ているうちに思い出しました。
170分あります。最初の30分はナレーションに感動します。
あの頃の日本の空気が映像とナレーションから蘇ってくるからです。オリンピックは戦後復興のシンボルだったのです。
見事なドキュメンタリーで、単にオリンピックの記録をフィルムに焼き付けただけでなく、その人間を見事に描いた芸術作品です。1965年のキネマ旬報ベストテンでこれまた2位。
市川崑監督の100メートル走の決勝シーンの映像で記憶していたのが、8年後のミュンヘン・オリンピックの記録映画「時よ止まれ、君は美しい」と「より速く」のパートだったことが判明したもの、収穫でした。
3本終わって背伸びしに来たら、もう5時半・・・あと2時間ですねー。
いよいよラストです。
4本目は、
1984年とぐっと最近になり、これは公開時にリアルタイムで観ています。
この年のキネマ旬報ベストテンで第6位という作品です。
吉永小百合さんが「おはん」に、その旦那の優柔不断男に「犬神家の一族」からタッグを組む石坂浩二さん、愛人の置屋の女将に大原麗子さんと豪華です。
女の情念、男の気持ちを表したいい映画でした。
完走して、
さて、時間はちょうど午後7時半。
お客さんは一部入れ替わって、「おはん」ともう1回やる「おとうと」を観る人達になっていました。
もう秋の空は夜になっています。
この灯を消してはなりませんね。
素晴らしい取り組みをしてくださるあたご劇場さんに「感謝」です。