一語一映Ⅲ

高知市の美容室リグレッタの八木勝二が、映画や本のこと、ランチなど綴ります。

キネマ旬報ベストテン鑑賞レビュー 「明日に向って撃て!」「曽根崎心中」

★★★★★・・・なにを置いてもレンタル店へ走ろう ←新設しました
★★★★・・・絶対オススメ 
★★★・・・一見の価値あり
★★・・・悪くはないけれど・・ 
★・・・私は薦めない 
☆・・・おまけ

※本編の内容に触れる個所がありますから、観られていない方は、ご注意ください。



【明日に向って撃て!】


1970年外国映画4位、20世紀フォックス映画、110分
監督=ジョージ・ロイ・ヒル、脚本=  音楽=バート・バカラック
主演=ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード、キャサリン・ロス

(ストーリー)
19世紀末の西部史に名高い、二人組の強盗ブッチとサンダンスの逃避行を、哀愁とユーモアをこめて描く。列車強盗としてならしたブッチとサンダンス。しかし、近代化に向かう時代に、彼らの生き方はあまりにも旧弊だった。新たな夢を求めて、二人は南米ボリビアへと旅立つが……。

(感想)
この年の1〜5位は、
第1位 イージー・ライダー 監督:デニス・ホッパー
第2位 サテリコン 監督:フェデリコ・フェリーニ
第3位 Z 監督:コスタ・ガヴラス
第4位 明日に向って撃て! 監督:ジョージ・ロイ・ヒル
第5位 M★A★S★H 監督:ロバート・アルトマン
でした。今なお語り継がれるアメリカン・ニューシネマが3本も並んでいます。
2位「サテリコン」のイタリアのフェリーニ監督の代表作。
3位「Z」は、「M」とともに世界一短いタイトルの映画ですが、
ギリシアを舞台のサスペンス映画の傑作でした。

初めて見たのは、名画座での「M★A★S★H」との2本立てでした。
もちろん封切りのちょっと後です。
同じニューシネマでも、中2生には「M★A★S★H」の世界はわかりづらく、
「明日に向って撃て!」の世界はかっこよくて、わかりやすかったので大好きになりました。

その後何度も見ていますが、永遠に名作です。
なぜか、古きよき時代の西部劇の終焉を軽いタッチで男の友情と絡めて描いている
音楽もシーンもとてもおしゃれ、俳優陣もみんなかっこいい、きれい。
独特なユーモアが全篇にあふれ(これは、監督・共演が同じでアカデミー賞を取った
「スティング」にも言える)、ピンチになっても悲惨でないところが新しい。

タイトルは二人の名前で「ブッチ・キャシディと(あの)サンダンス・キッド」というものですから
3年前のニューシネマの先駆けとなった「俺たちに明日はない」からいただいたものなのでしょう。
後にレッドフォードが映画監督になって、若手育成のための映画祭を作り、それを
「サンダンス映画祭」と名づけたほど、好きな役柄だったということなんでしょう。
未見の方は、西部劇いやだ〜と言わず、まあ見てみてくださいな、絶対はまりますから。
★★★★★



【曽根崎心中】


1978年日本映画2位、ATG映画、112分
監督・脚本=増村保造、脚本=白坂依志夫、音楽=宇崎竜童
出演=梶芽衣子、宇崎竜童、井川比佐志、左幸子、橋爪功

(解説・ストーリー)
お初は女の意地のため、徳兵衛、男の意地のため、夢の夢こそあはれなれ。
近松の古典を梶芽衣子と宇崎竜童の共演で映画化!

因習的な日本社会に対抗して意志的に生きる女性像を大映のプログラム・ピクチャーの中で
追求した増村保造監督が、人形浄瑠璃の名作を題材に“女の意地”を描ききる!
主演の梶芽衣子はこの年の主演女優賞を総ナメ。

「この世の名残、夜も名残、死にに行く身をたとふれば、あだしが原の道の霜」。
大阪の醤油屋の手代・徳兵衛は、遊女・お初と夫婦になる約束をしたが、悪人に騙され、
預かりものの大金を騙し取られてしまう。進退窮まった2人は遂に心中を決意する。


(感想)
これを見たのは、大学生の頃、封切りででした。
近松門左衛門の原作の心中ものだとは、日本史的に知っていただけで、内容は知らず。
大阪の曽根崎にある「お初天神むのゆわれも知らずで見たものですから、
最初のインパクトは、「なにこの舞台みたいな映画?」でした。
それは、英語がわかったら、「ロミオとジュリエツト」でも感じていたかも知れない
芝居のせりふのような、大げさで時代かがったセリフなのでした。
でもセリフの力とテンポが半端じゃないのです。

たった好きなもの同士が、結婚できずに、いろんな障害に抗えず、心中に至るという物語を
これだけ、力の入った芝居と112分が長く感じない映画になったのは、
お気に入りの増村監督の情熱と、梶芽衣子さんの大熱演でしょう。
増村監督の中では、マイベスト1であり、梶芽衣子さんの「さそり」「修羅雪姫」と共に代表作になりました。

今回DVDになったのは、本当に素晴らしいことです。
ATGの最後の名作といってもいいかもしれません。
この年の1位の「サード」とともに。★★★★★