一語一映Ⅲ

高知市の美容室リグレッタの八木勝二が、映画や本のこと、ランチなど綴ります。

手塚治虫を読む その3 「鉄腕アトム・地上最大のロボット」レビュー

懐かしいアトムの月刊誌「カッパコミックス」

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これは、僕が小学2年生のときに買った、カッパコミックスの「月刊・鉄腕アトム」です。1964~1966の3年間毎月1冊刊行されました。

それの17冊目、18冊目なんです。
生まれてはじめて買った漫画本なんです。
それは宝物のように何度も何度も読み返しましたよ。

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そして、その1ページ目と2ページ目の見開きです。
この2ページだけで、ストーリーのイントロの多くを語っていますね。
驚きです。全部で178ページの物語です。
いまなら、単行本ちょうど1冊のページ数ですが当時で言うと、大長編ですねー。

漫画の月刊誌「少年」に1964年6月号から、1965年1月号まで8回にわたって連載されています。
1回当たりだいたい23ページぐらいの連載です。 

7人の最強のロボットたち

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2ページ目に、この世界で強いロボット7人と戦って勝つために作られた
地上最大のロボット、プルートウを紹介します。
7人のロボット、所属の国名と仕事と名前全部いえますか?

僕は覚えましたよ、全員。僕の年代だと今でも見ずに名前を言える人って66e多いのではないでしょうかねぇ?
世界の国々を見事に網羅し、ネーミングも覚えやすく、その地域にちなんだものでした。 

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一人目、スイスの山案内用ロボットモンブランは、たった2ページ、
始まってから4ページで、破壊されます。このコマ割りとストーリー・テリングの見事さ。無駄なコマなんかはひとつもありません。 

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二人目は、スコットランドの執事ロボット、ノース2号です。
博士の執事をしているようです。

手が6本あり、その手がプルートウにもぎ取られると、
そこから、こんな機械のような手が出てきて戦闘用になります。
ここいらは少年の心をつかむのに十分の要素ですね。

よく真似して描いたものでした。 

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この間に、アトムとは二度絡むのですが、その二度め、
誘拐されたウランを取り戻しにきた南の島で、トルコのロボット力士ブランドーが
モンブランの仇を討ちにやってきます。

ブランドーとの決闘は熾烈を極め、唯一破壊シーンのない戦いです。
瀕死の状態で勝ち残ったプルートウは、動けなくなり、主人を呼んでもらう恩義を
アトムに受けます。 

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4人目はドイツのロボット刑事ゲジヒトです。
日本にアトムを訪ねてきます。事情聴取というようなカタチで。
そして日本で、対決となるわけですが、ゲジヒトは、ゼロニウムという超合金で
体が作られているため、プルートウの角から出る電磁波が効かないのです。

「私の体にはも電磁波は効かないと言っただろう」と高笑いしたとき、
プルートウは角を左右に大きく捌き、ゲジヒトは真っ二つに壊れてしまいます。
油断大敵というやつですね。

因みに、このゲジヒト刑事、後の石ノ森章太郎氏の「ロボット刑事」の造形に
かなり影響しているのが、見て取れます。
この頃の手塚さんは本当に「漫画の神様」だったのです。 

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そして舞台はギリシアの神殿。5人目の登場です。
ヘラクレスという唯一仕事がはっきりしていないロボットとの対決です。
ロボット馬とともに、「勇士」とだけ書かれていますから、
古代ギリシア・戦闘ショーをしているスターなのかもしれませんし、
古い神殿を守るスタッフなのかもしれません。

勇士ヘラクレスは、プルートウの弱点を発見しますが、
そこをついているときに油断をして、腕をもぎ取られます。
こうなると、勇士は自分の首をミサイルにして、手を飛ばし、
両足で、プルートウの角を踏みつけ、動けないようにしておいて
自爆し、相討ちを狙います。

だが、プルートウは勝ち残ります。 

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10万馬力の自分では勝てないと感じたアトムは、
「100万馬力にしてください」という願いを、お茶の水博士にしますが
「強いだけがロボットではない」と諭されますが、あきらめきれずに
天馬博士に100万馬力の改造をしてもらいます。

このあと、パワーアップしすぎたアトムが一時おかしくなるコミカルな場面もあります。 

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6人目のオーストラリアのイプシロン、このロボットが一番人間くさく
描かれていてファンも多いのではないでしょうか?

仕事が、なんと「孤児院の先生」なんです。
男前で人気がありましたねー。 

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100万馬力になって、ちょっとおかしくなったアトムが、誤って深海の底に沈んでしまい、それを救出に来た、プルートウとイプシロン・・・

ブランドとの戦いのときの、貸しを返すためアトムを救いに行きます。

プルートウは重いため、海底のぬかるみにはまったところを
そのまま沈んでいくのを放っておけば、自分は戦わなくてすむ、
でもロボットとしては、助けなければいけない、と悩むイプシロン。

光子ロボットという、光をエネルギーにするロボットだけに
エネルギーは無尽蔵なんです。
結局、イプシロンはプルートウを救い出します。
そして、このシーンが弱点を見せてしまうことにもなるのです。 

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プルートウがイプシロンとの戦いを挑んだのは、太陽の出ていない深夜の時間帯。
自分を慕って出てきた子どもを救うべく、手だけを残して、
「光…光・・・ひかり…」といいながら、爆発してしまうイプシロン。
いろんな物語から、手塚さんがヒントを得ていることはお分かりでしょう? 

鉄腕アトム(全21巻+別巻2巻セット) (SUNDAY COMICS)

鉄腕アトム(全21巻+別巻2巻セット) (SUNDAY COMICS)

 

  

なぜ、地上最強のロボットではなくて、地上最大のロボットにしたのか? 

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アトムとの戦いは阿蘇山で行われました。
対決の最中に、噴火が始まります。
人命救助のために、噴火をとめようとするアトムと、戦いを続けようとするプルートウ。

でも戦いは、噴火を沈めて殻で石じゃないかというアトムの提案に乗ったプルートウは、協力して大きな岩を運び、噴火を鎮めてしまいます。

プルートウに芽生える「善意の心」
アトムとの対決を拒否し、主人に初めて逆らうも、プルートウを作った博士が
200万馬力の巨大ロボット・ボラーを作り、決闘させてしまいます。

この博士実は、もともとプルートウの主人サルタンの召使ロボットだったんです。
サルタンのロボットに対する考え方を気づかさせるために、プルートウを作ったんだとも。

最強よりも、「最大なる偉大なロボット」という意味で、タイトルを「地上最大のロボット」にしたのだと思います。 

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こうして、人間たちが作った、おろかな最強ロボットたちの決闘は終わります。

このラストシーンの1コマに託されたメッセージの重さは、全鉄腕アトムのテーマでもあります。
テレビアニメでこの作品は2週に分かれて放送されました。

このシーンのバックにかかる「アトムのテーマソング」が今でも耳に残っています。

 

※因みに、この物語をオマージュを捧げた名作「プルートウ」は、手塚さんの息子・眞さんと、大ファンだった浦沢直樹氏によって、リメイクされた作品です。

 

PLUTO (プルートウ) 全8巻完結セット (ビッグコミックス)

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www.ligretta.com

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