一語一映Ⅲ

高知市の美容室リグレッタの八木勝二が、映画や本のこと、ランチなど綴ります。

昭和の映画レビュー 「真剣勝負」「好色一代男」「戦争と人間・第一部」


★★★★・・・絶対オススメ 
★★★・・・一見の価値あり
★★・・・悪くはないけれど・・ 
★・・・私は薦めない 
☆・・・おまけ

※本編の内容に触れる個所がありますから、観られていない方は、ご注意ください。


『真剣勝負』

東映で1年に1作撮られた「宮本武蔵」5部作は、1961年から65年まで続き
監督・内田吐夢さんの代表作のひとつとして有名な作品ですが、
これは1971年に、突然東宝で作られた、宮本武蔵番外編という趣の作品です。

この75分という短い作品が内田監督の遺作になったことを考えれば、
よほど、東映5部作に、鎖鎌宍戸梅軒のエピソードが入れられなかったことが
悔いに残っていたように思われます。

基本登場人物は4人だけです。
5部作のまま武蔵を演じる中村錦之助と、三国連太郎演じる、鎖鎌の名人・宍戸梅軒、
それにその妻に、沖山秀子、そして赤ん坊と、ほぼこれだけなんです。

武者修行中の武蔵が、高名な梅軒の鎖鎌の話を聞きに寄るというところから
映画は始まり、武蔵が武芸者になりたての頃殺した、野伏りの頭領が妻の兄であったことが
判り、そこから闇討ち、決闘へと展開していきます。

梅軒夫婦を演じた2人の役者さんの鎖鎌の演技が見事で、
なかり習練しただろうなということは、容易に伺えます。

短い映画ですが、東映5部作の予算も様式美も捨てて、決闘のみに終始するこの映画
テレビ放映でやっと見たのですが、これが作りたかったんだろうなぁ?ということが
とてもわかる映画でした。   ★★★



『好色一代男』


江戸時代に書かれた井原西鶴の、代表作の映画化です。
主演・市川雷蔵、監督・増村保造と来たら、期待する字やないですか?

作品は1961年の作で、92分にまとめられています。
原作はかなりな長編らしいのですが、商人の放蕩息子与の介(雷蔵)の日本を行脚しつつ
庶民や女性との絡みを多少の風刺を込めて、つづった娯楽映画です。
雷蔵ものとしては、コメディに属する作品で、飄々として演技もなかなかのものです。

女優陣も充実していて、中村玉緒、若尾文子、水谷良重、らと豪華です。
世の中に対する風刺を軽いタッチで描いているので、楽しみつつどの時代も
似たようなもんなんだな、とつい、クスッとしてしまいます。レンタルあり。

増村監督の映画をこれから発掘して 行こうと思ったことです。★★★



『戦争と人間・第一部』


日活が作った、全3部作合計9時間23分という超大作の第一部で、3部作の中でも
一番見ごたえがあるのがこの第一部197分(休憩あり)です。

五味川純平さんの原作では、全6巻の「人間の条件」が6部作9時間31分に次ぐ
大長編ですが、こちらは全18巻をまとめていますから、かなり展開も早くエンタテインメントです。

監督が社会派なのに娯楽大作を得意とする、山本薩夫さんで、この人の映画に退屈はありません。

俳優もすごいですよ。
日活の当時のスターは全員、裕次郎や浅岡ルリ子も出ています。
昭和3年から8年までが第一部です。
改めて昭和の戦争史を学ぶのにいい映画であり、全員が日本人で、
中国人(栗原小巻、山本学、大滝秀治)朝鮮人(地井武男)などを演じてはまっています。

日本の新財閥・伍代産業の人々がどう戦争に絡み、変遷していくかを描く大河絵巻です。
中学のときに見て以来ですが、3時間超、全然退屈しませんでしたね。

ここでも、三国連太郎さんは、殺し屋鴨田駒次郎に扮して、怪演技しています。
この頃の三国さんって、怪優だったんですよ。
名優といわれだしたのは「釣りバカ日誌」の前あたりからですよね。

これは、見ておくべき映画のひとつだと思います。レンタルあり。★★★★