一語一映Ⅲ

高知市の美容室リグレッタの八木勝二が、映画や本のこと、ランチなど綴ります。

ブックレビュー 「森見登美彦の 京都ぐるぐる案内」「新版 名探偵なんか怖くない」「手塚先生、締め切り過ぎています!」



『森見登美彦の 京都ぐるぐる案内』

京都に住んだことのある人、特に京都大学周辺だとこの本には
はまっちゃうかもしれませんね?僕には、ど・ストライクの本でした。

写真と文章と、森見さんの作品に出てくる文章で綴る京都を愛し、舞台にする作家の
好きな京都紹介、という趣向の本です。

きれいな写真が、大学時代のあの辺を思い出して、
懐かしくなりました。

ただ、作品自体は、1作だけしか読んでないんですよ。
そういう意味では、も作家としては、これから研究の余地有りねという事でしょうか?

新潮文庫 520円+税


『新版 名探偵なんか怖くない』

1971年の西村京太郎作品。
「天使の傷痕」で感動とミステリーの醍醐味を見せ、見事乱歩賞を受賞した西村さんでしたが
この頃はまだトラベルミステリーを書いておらず、いろんな種類のミステリーを書かれています。
「推理小説」という範疇のものが結構多いです。

今は(トラベル)サスペンス・ミステリーというジャンルを開拓して大ヒットメーカーですが、
本作の頃にはも売れっ子ではありませんでした。

世界の名探偵、ポワロ、メグレ警部、クイーン、明智小五郎、が日本に集まり
3億円事件の再現をはかり、それを解決するという趣向のミステリーです。

読んでいる途中、こんなに古典的名作のトリックや犯人まで「ネタばらし」していいのか
と思ってハラハラしながら読んだことでしたが、全部それも織り込み済みのトリックにつながるのでした。
久しぶりに、「ああ、やられた〜」と思うミステリーでしたねぇ。

この後、4部作となりますが、あまり売れていないようなのでご紹介しておきます。
「天使の傷痕」「四つの終止符」「消えた巨人軍」など、初期の西村ミステリーは、すごいんです。
講談社文庫 619円+税。


『手塚先生、締め切り過ぎています!』

担当編集者、漫画家、チーフアシスタントと、手塚治虫さんをずっといろんな角度から見てきた
福元一義さんの回想的、手塚治虫論です。

3つの立場から見た手塚治虫さんは、他の作品等でも言われているように
「仕事の虫」「断れないお人よし」「映画大好き人間」「常に勉強家」という側面は
知っていますが、身内同然の筆者から見た「書いていないと不安になる臆病者」の
側面も何度でもヒット作を飛ばし、復活してきた手塚さんの負けず嫌いを証明している
様で、世間では「漫画の神様」と呼ばれているのに、本人は「負けたくない」という
純粋な気持ちの持ち主だったことが、とても新鮮に受け取れました。

執筆中での死のシーンも初めて分かりました。
早世は悔やまれますが、残した作品に悔やみはないでしょう。
今でも僕たちは、氏の作品を繰り返し読み返しているのですから。
集英社新書 700円+税。