一語一映Ⅲ

高知市の美容室リグレッタの八木勝二が、映画や本のこと、ランチなど綴ります。

独断と偏見の映画評 114


★★★★★・・・なにを置いてもスクリーンへ走ろう ←新設しました
★★★★・・・絶対オススメ 
★★★・・・一見の価値あり
★★・・・悪くはないけれど・・ 
★・・・私は薦めない 
☆・・・おまけ

※本編の内容に触れる個所がありますから、観られていない方は、ご注意ください。


【『かぐや姫の物語』】


ロングラン大ヒット上映中のこのアニメ映画、ただものじゃありません。
ジブリでは「風立ちぬ」で大ヒットを飛ばしたため、公開が重なってしまうといううれしい誤算でした。

高畑監督は、どちらかといえば宮崎監督に比較して、これという作家性が感じられず
ジブリの中での「宮崎アニメの間のつなぎ監督」てきな作品が多かったので
本作は意外でしたよ、最初見たときは。

高畑監督というと「火垂れの墓」の大ヒットが浮かびますが、
となりのトトロ」との2本立て興行(ホントですよ!!)だったので、
正統派アニメの監督というイメージから始まったのですが、
その後「おもひでぽろぽろ」で紅花染めにのめり込む女性を描き
「平成狸大合戦」では、メッセージ性は強くあるものの、ジブリ最悪の作品だと僕は思い、
となりの山田くん、ホーホケキョ」では、この人の主体どこなのと疑ったり・・・。
でも、よく見てみれば、それが作家性であり、どんな作品も撮れる人だったんですね。

さて、最初は正直「かぐや姫の物語」全然期待していませんでした。
時間が合うのがこれしかなかったので、話題作だしまあいいか、と見始めたらびっくり仰天。

テレビCMで流れていた、かぐや姫がサクラの下で躍動的に動くシーンの美しいこと。
手書きアニメの新しい限界への挑戦を、「崖の上のポニョ」のオール・セル画にこだわる方法ではなくて
背景も動かすという斬新なアニメに仕上げてしまいました。
全く過去にないアニメへの挑戦でしたね。
ディズニーでもこれは、まねできません。

題材は誰でも知っている「かぐや姫
しかし、今まで「かぐや姫はなぜ月から地上に来らされたのか、ということに
初めて革新的に「罪を犯したから」と解釈を加え、月の世界が極楽浄土の世界である
というような解釈を加え、月に帰る理由を明確にしました。

絵もさることながら、声優陣のできばえも素晴らしく、おじいさん、おばあさんは
地井武男さん、宮本信子さん、アテレコでは最高の出来ではないでしょうか?
地井武男さん、最期にいい仕事をされましたね。★★★★★




【『武士の献立』】


「武士の家計簿」に続く、加賀百万石の刀侍ではない話シリーズの2本目です。
今度は、藩の賄いを担当する包丁侍の話です。

勘定方はあっただろうと想定できますが、
賄いを武士がしていたというのには驚きました。
てっきり、あの時代の賄いは女の仕事だと思っていたので
武家の侍女たちか、町人の娘たちが出入りしていたものだろうと勝手に想像していたのです。

包丁侍の元締め役の侍に西田敏行さん、二男で長男の急逝により刀を包丁に持ち替えなくては
ならなくなった侍に高良健吾さん、その年上の嫁に上戸彩さん、という組み合わせ。
監督は「釣りバカ日誌」でハマちゃんと組んでた、朝原雄三さんじやありませんか?

江戸の時代の台所や屋敷のセットはお見事です。本当に。
そして、出される料理の本物さも見事です。

ですが、ドラマには物足らなさが残り、加賀騒動の描かれ方も取ってつけたよう。
最後の加賀藩主交代の儀の祝宴で、見事に総元締めを努めた高良さんの
上役が、鹿賀丈史さんなのは、「料理の鉄人」へのオマージュなのか、と笑ってしまいました。
加賀=鹿賀という、しゃれでもないでしょうし。

ラストに流れる英語の音楽も、はなはだしく興冷めでした。
ここいらが「釣りバカ日誌」が「男はつらいよ」になれなかったところなんでしょうね。★★★