一語一映Ⅲ

高知市の美容室リグレッタの八木勝二が、映画や本のこと、ランチなど綴ります。

手塚治虫を読む その1「魔神ガロン」レビュー

「魔神ガロン」は、1回終ってまた始まった。


さて、今回は「冒険王」に昭和34年7月号から、37年7月号までの4年間連載された
「魔神ガロン」です。


このサンデーコミックスは今も発売中です。
この表紙はご覧になられたことがあるかもしれません。
319ページもある、珍しく厚い本で当時の定価240円より、少し高かった記憶があります。


この本のラストシーンは、これなんです。
なんか、渦に巻き込まれて、呆気なく終わっています。

ところが、その後があるんです。


手塚治虫全集では全5巻になっています。
ただし、通し番号は続いていなくて、連載が中断した様子が見て取れます。

「魔神ガロン」の続きは・・・

その上、

この回は特に、絵柄が変わり雑な1か月分の連載があり、
代筆?という噂も流れたいわく付きの作品なのです。


さて、ガロンは宇宙人が地球に送った、無敵の兵器です。
巨大・怪力・熱光線・頑強・・・

でもこれは、武器にもなれば凶器にもなるというしかけなんです。
「W3(ワンダー・スリー)」と同じように、地球人がそれをどう使うかを
宇宙人が試しているというストーリーなんです。


「魔神ガロン」は、手塚治虫巨大ヒーロー3部作(なんていい方ありませんが)のひとつで、
「ビッグX」「マグマ大使」と並ぶ当時の流行(大魔神やウルトラマン)ものでした。
他の2作はアニメ化を前提に描かれたものでしたが、「魔神ガロン」だけはアニメ化されませんでした。

でも特別な愛着があるだろう、と思えるのに、
キャラクターをたくさん描いているサインなどには、
必ずこの3ヒーローが描かれていると言うことなんです。
全部のキャラクターの名前がいえますか?みなさん・・・。

次々と出てくる悪役たち


さて、

ガロンには、胸の中にハートマークの格納室があり、そこにピックが入って指示をするのです。
ピックは「良心」なのですが、子供ですから、すぐに捕まったり、怪我したりしてしまいます。


するとガロンは、暴れだしたりして、凶器に時折なっていきます。
その「ジキルとハイド」な部分わ分かりやすく描いたのがこの漫画です。
暴力は時として、正義だったり、悪だったりします。
捉える側により、どっちにでもなるのです。


最初に登場する悪党は、タランテラ。
世界征服をたくらむ悪者です。
ピックとガロンのセットで、言うように動くということを突き止め、
ピックを捕まえて、手なづけようとしたりします。


タンラテラが失敗して、爆死した後は、この奇妙な海底都市の「龍王」が登場します。
海底での戦いは、海底火山の噴火で龍王の基地が破壊されたところで終わります。
ここまでが、前編です。
2枚目の画像が、そのラストシーンになっており、しばらくそのまま、未完状態でしたが。


好調だったのか、「冒険王」では連載が続き、続々とガロンを利用して
儲けたり、悪事を働いたり、戦争に利用するものが出てきます。

丸首ブーンは、「魔神ガロン」では、黒岩商事の社長・黒岩です。
後で、改心し正義のために殉死するためか、悪党のような名前がつけられていません。


そして、ゴースト博士とX大佐です。
地底王X大佐との戦いは、黒岩の献身的な自爆で幕を閉じます。


そして、舞台はアフリカへ。
当時の冒険SF映画の全てを集約していますね。
ゾロモン帝国の大王様と、占い師ガゴール老婆です。


ガゴール老婆は、実は若い女スパイで、ドイツの科学者ベーリングに
雇われていたことが分かります。
次から次へと、プランが出てくるものだと感心しますが、
ここらあたりから、ドイツ、アメリカ、太平洋と舞台が変わり、
第二次世界大戦の風刺のようなシーンが目立ち始めます。


ベーリング博士が作ったガロンの複製ロボットたちが、当時のナチスのように
無感情に破壊や殺戮を始めます。

ゾロモン王国で繰り広げられる、ガロン対コピーガロンたちの戦いを見た
大王は、平和を決意して、武器を全て、火山に捨てに行くのでした。


舞台は、いよいよアメリカへ。
新しい悪役ロッコです。

そして大団円へ

映画「キングコング」のようなシーンをちりばめて、ガロンの大活躍で、ロッコは滅びます


そして、アメリカ西部のインディアン・ブッド博士の登場です。
この天才科学者は、愛娘のチマを約束していなかった水爆実験で亡くしてから精神異常に陥ります。

狂気の中で、チマとピックを同一視してしまい、さらい、ガロンでアメリカに戦争を仕掛けて行きます。
科学者なので、ロボットも作っており、だんだんスケールアップしていくんですよね。


ここまで来るともう、科学冒険漫画になってしまっていますね。
巨大ロボット同士の戦いなんて。


アメリカでの戦いを終え、日本に帰る途中にふとしたことから
ついに舞台は、第二次世界大戦中の太平洋へタイムスリップします。

もうここまで来たらも、なにが起こってもおかしくないんですよ。
アメリカ軍隊との戦闘が続きます。激戦にもガロンは勝ちます。


劇中何度も気を失ったり死んだりする、ピックは、
ガロンのハートの中で、休むことで命を取り戻します。


そして、ラストシーンです。
ガロンが地球上に居ると、争いの手段に使われる。
そして、悪用されると自爆する装置宇宙人につけられた。

ケン一とピックは兄弟として育てられましたが、
ピックとガロンは、タイムマシンを使って1万年後の世界へと旅立ちます。


魔神ガロン (サンデー・コミックス)

魔神ガロン (サンデー・コミックス)