一語一映Ⅲ

高知市の美容室リグレッタの八木勝二が、映画や本のこと、ランチなど綴ります。

昭和の映画レビュー 監督増村保造・脚本新藤兼人・主演若尾文子トリオ「清作の妻」「華岡青洲の妻」「卍」


★★★★★・・・なにを置いてもレンタル店へ走ろう ←新設しました
★★★★・・・絶対オススメ 
★★★・・・一見の価値あり
★★・・・悪くはないけれど・・ 
★・・・私は薦めない 
☆・・・おまけ

※本編の内容に触れる個所がありますから、観られていない方は、ご注意ください。


今日は、今はまっている、
監督・増村保造さん、脚本・新藤兼人さん、主演・若尾文子さんのトリオの3本立てです。
すべて文芸書が原作の脚色映画です


『清作の妻』


モノクロでよかった、カラーだったら気絶していたかも?
いやいや、血の色に押されて、それが強調されすぎる映画になったから
敢えてモノクロ映画にしたんでしょうね?

村八分にされて、大金持ちの老人の妾をして家計を支えていた若尾は、
老人の死亡とともに、莫大な遺産をもらって田舎に帰るも、村八分状態のまま。

そこに除隊してきた隣の家の模範青年・清作が村に帰ってきて、激しくぶつかりながらも
惹かれて行き、周囲の反対をよそに夫婦関係になってしまう。

また赤紙で呼ばれた青年は、負傷をして生きて帰ってきます。
二度と放すまいと、傷がいえて三たび出征していく夫に、清作の妻がしたことは・・・?

ポスターの五寸釘でそれは想像できるでしょうが、このシーンだけではなくラストも衝撃の作品です。
こんな名画、もっと早く見ておけばよかったです。
今まで見た中では、増村+若尾コンビの作品では「赤い天使」と並んで最高峰。
★★★★


『華岡青洲の妻』


ご存知、有吉佐和子の有名小説の映画化です。
無知なもので、麻酔手術を開発したえらいお医者さんの物語だとばかり思い込んでいたら
はやり、このトリオが作る映画はそんなに一筋縄ではいきません。

若尾の夫の華岡青洲に市川雷蔵、その母に高嶺秀子と、主演俳優3人が3つ巴で
情念のぶつけ合いを演じるものですから、これは見ているだけでも体力を消耗する作品でした。

青洲は庭に咲く白い茄子の花から、麻酔薬を作り、手術に生かすことに命をかけ始めたのです。
そして動物実験がほぼ成功したあとに、人体実験をしなければならず、
母の高峰と、妻の若尾が「私で試してくだされ」と申し出たものですから、雷蔵も大変。
結果二人ともを実験として使うことになるのですが、ここからまた複雑に絡む事件に発展していきます。
3人とも命がけであり、そういう演技化のです。

だから、これもすごい映画です。キネマ旬報1967年日本映画第5位という栄誉でした。
誰が一番すごいかというと、やはり若尾文子なのでした。
★★★★★



『卍 (まんじ)』


これはまた谷崎潤一郎の耽美小説の映画化ですから、中期の増村が得意とした
ジャンルなのでしょうが、同性愛のシーンの描写が時代柄制約されているので、
せりふや表情でその思いの移ろいや、執念深さや、嘘をついて騙すシーンなどの
アンサンブルで成り立っている映画です。
その意味では、脚本の勝利でしょう?

その証拠にのちの「卍」の映画化では成功した作品はなく、
女優さんの裸の話題ばかりが取りざたされてしまいます。

どこに落ち着く話なのかが、最後まで読めないミステリアスさは、
若尾のすごいツンデレ演技と相手役の岸田今日子の優柔不断に戸惑う夫人の演技
そして、船越英二が見せる主体性のない男の名人芸・・・。

でも今となっては、この脚本で、映像も見てみたいと正直に思うのです。
★★★