一語一映Ⅲ

高知市の美容室リグレッタの八木勝二が、映画や本のこと、ランチなど綴ります。

手塚治虫を読む その6「鉄の道」レビュー

 

鉄の道 (手塚治虫漫画全集)

鉄の道 (手塚治虫漫画全集)

 

 
今回は手塚作品の中でも比較的知られていない「鉄の道」という作品です。
昭和37年1月の「小学6年生」から始まり、
そのまま「中学生の友一年」に連載が続いて翌3月までの連載でした。

当時は学年誌(小学館と学研にありましたね)が強い時代でした。
今残っているのは、1年生からの低学年と、「蛍雪時代」だけではないでしょうか?

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タイトルはジョン・フォード監督の「鉄の馬」から取ったものらしいです。
内容からすると、シルクロードを旅する少年の物語ですから、「絹の道」なのかもしれませんが、少年の成長譚ですから、向かっていく心を鉄の心として「鉄の道」でも、いいかな?と。

このタイトル文字が、映画の影響受けていますよね。

あの頃の史劇などは、ほとんどこのパターンのタイトル画でしたものね。

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さて、イントロはローマ帝国から始まります。
アキレタスという強い英雄が、東を目指します。征服のために。

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日本から、遣唐使の一人として中国にわたって来た少年タケルは、恐いもの知らずの少年で、虎退治もお手の物で、中国全土に名が知られていきます。

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シルクロードをヨーロッパに向かう商隊に加わり、西を目指すことになります。
このページぶち抜きの、ワイドスクリーンこそ、この時代の映画的ですね。

70ミリ大作映画が花盛りの頃の影響が、コマ割りに見受けられます。

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旅の途中、大きな竜巻に襲われても、

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隊長の座を奪った、悪役タン・メンに車輪に縛られても、めげません。

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そして、ローマから来たアキレタスとの対決。
この3つのシーン、たいてい「さて、来月の展開は、いかに?」というコマなんですね。
必ず、「さあ来月はどうなる?来週はどうなる?」が、連載冒険漫画の王道でした。

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このコマもそうですね。
宿敵タン・メンとの対決はいかに?が最終回へ向けての期待をあおります。

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2年連載ぐらいのつもりで始めたのでしょうか?
でも、手に取るように、手塚さんが「面白くなくなった」というのが読んでいてわかるんです。

そうそうと、こういう結末で、当時はやりの西部劇のように、渡り鳥(流れ者)として
タケルが去っていくシーンで、ハッピーエンドにしてしまいました。

どう見ても唐突過ぎる展開です。

かと言って、並の漫画家ではない手塚さんの作品です。
読み応えありですし、読み飽きもしません。

当時の少年冒険ものの漫画のお手本のような物語です。