昭和の映画レビュー 「関の彌太ッぺ」「女番長 野良猫ロック」「ザ・スパイダース バリ島珍道中」
★★★★★・・・なにを置いてもレンタル店へ走ろう ←新設しました
★★★★・・・絶対オススメ
★★★・・・一見の価値あり
★★・・・悪くはないけれど・・
★・・・私は薦めない
☆・・・おまけ
※本編の内容に触れる個所がありますから、観られていない方は、ご注意ください。
1.「関の彌太ッぺ」
1963年の東映映画、山下耕作監督の股旅ものの傑作です。
話をご存知の方は多いでしょう?
大作家・池波正太郎さんの師匠・長谷川伸さんの傑作のひとつです。
親と死に別れたやくざな身に、思うものはただひとつ、祭りの夜に生き別れた妹。その探しの旅の中で起こるごたごたま中で、川におぼれる子どもを助けたことから始まる物語です。
これだけ日本人の心をつかんで話さない映画も珍しいです。
川の景色、花の色、竹林の空気、どこまでも続く一本道、鳴り響く鐘の音・・・
原作をよりドラマとして開花させた山下監督のロケハン、構図の取り方には唸らせられますねー。
主演の当時・中村錦之助、子どもの10年後を演じる可憐な十朱幸代、兄弟分といいながらも悪らつな騙りで弥太郎をだますチンピラやくざに、木村功、とみな名演です。股旅映画では、市川崑監督の「股旅」と並んで、マイベストな映画です。★★★★
2.「女番長 野良猫ロック」
1970年から日活で始まった「野良猫ロック」シリーズの第1作です。
このあと、東映では「女番長ブルース」(主に杉本美樹、池玲子)シリーズ、「ずべ公シリーズ」(大信田礼子主演)シリーズ、「さそりシリーズ」(「野良猫ロック」シリーズでずっと主演を張った梶芽衣子が主演)、「修羅雪姫」シリーズ(これも梶芽衣子が主演)、東宝で「混血児リカ」シリーズ(青木リカ、これだけだったのかなぁ)と、いわゆるピンキー映画のシリーズものが各映画会社で続々と作られます。正直どれがどれかわからないような展開が続きますが、段々と持っていきようのない青春映画から、怨みつらみ、差別、抗争、セックスという色が濃くなって行きます。
そのピンキー映画の第一作といってもよい本作は、主人公はポスターの通り和田アキ子になっています。歌手としての起用ですから、演技は下手で、バイクシーンはもろスタントなのですが、アクションに迫力があるので、まあそれなりに楽しめます。
梶芽衣子はここから出ており、この後ずっと主演を張ることになります。
若き日の藤竜也が、サングラスにバギーというスタイルですごむのが、今見れば笑えます。
特筆すべきは、そのころのミュージシャンがディスコなどの演奏場面で出ていることです。この作品には、鈴木ヒロミツがボーカルのモップス、オリーブ、失神のオックス、そしてまだアンドレ・カンドレと名乗っていたころの井上陽水が登場するのです。これだけでもお宝映画なんですよ。★★
3.「ザ・スパイダース バリ島珍道中」
この頃人気のグループサウンズは全部と言ってもいいほど、映画に出ていますね。・・・というよりも、流行った歌、人気のある歌手は全部、ヒット曲のタイトルを冠した映画が企画され、ほとんど主演していたものです。
グループサウンズでいえば、ザ・タイガースが横綱で、大関にテンプターズとザ・スパイダースが居たという構図でしょうか?
グループでは、クレイジーキャッツとドリフターズがダントツに映画に出ていますが、ザ・スパイダースはその後の活躍ぶりを見ても芸達者が多いので、映画も演技も安心して見られるものに仕上がっています。
本作は日活で制作されたシリーズものの4作目です。
散りばめられた曲は大ヒット曲はありませんが、スパイダース・サウンドを思い出させるムードのいい独特のテンポの曲が入っています。
ストーリーは他愛のないもので、バリ島に行く段取りもむりくりっぽいですが、そこはアイドル映画の名手・西河克己監督です、安心して見ていられます。
個人的には「麻雀放浪記」の高品格さんが殺し屋で出ているのが懐かしくて、それだけでも楽しめました。
この頃から、堺まさあき、井上順、ムッシュかまやつ さんの存在感は特別でしたね。★★★