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一語一映Ⅲ

高知市の美容室リグレッタの八木勝二が、映画や本のこと、ランチなど綴ります。

キネマ旬報ベストテン鑑賞レビュー 「卒業」「もらとりあむタマ子」

★★★★★・・・なにを置いてもレンタル店へ走ろう ←新設しました
★★★★・・・絶対オススメ 
★★★このコラムではこれ以下はありません。

※本編の内容に触れる個所がありますから、観られていない方は、ご注意ください。


『卒業』


1968年 外国映画第6位、アメリカ・ユナイト映画、105分、カラー
監督=マイク・ニコルズ、脚色=カルダー・ウィリンガム・バック・ヘンリー、
追加音楽=デーヴ・グルーシン 歌= ポール・サイモン
出演=アン・バンクロフト、ダスティン・ホフマン、キャサリン・ロス、ウィリアム・ダニエルズ

(ストーリー)
大学を卒業し前途洋々のベンジャミン。
彼は、祝賀パーティの席で誘惑をかけてきた中年女性ロビンソン夫人と逢瀬を重ねることに。
だが彼女の娘エレインが現れた事で、その関係は崩れていく。
親の勧めで不承不承エレインと付き合うことになるベンジャミンは、彼女に惹かれていったのだ。
一方、そんな若い2人に嫉妬するロビンソン夫人。
やがて、彼女とベンジャミンの関係がエレインの知るところとなるのだが……。

(鑑賞)
分類上は、アメリカン・ニューシネマの中に入れられる名作ですが、
同時期に公開されアメリカン・ニューシネマの代表作「イージー・ライダー」「俺たちに明日はない」
「真夜中のカーボーイ」「泳ぐ人」等の退廃したアメリカとは一線を画す、ライトコメディのような映画です。

その大きな要素が「サイモン&ガーファンクル」のヒット曲の数々です。
「サウンド・オブ・サイレンス」「スカボロー・フェア」「ミセス・ロビンソン」は
強烈な印象で、実に効果的に使われていましたね。
映画のテーマソングにこういう既成のグループの曲を複数使うというのは
初の試みだったのではないでしょうか?
以降、「小さな恋のメロディ」「サタデーナイト・フィーバー」などありますが。

この映画でのアン・バンクロフトが圧倒的な演技です。
演じた1968年当時、実年齢では36歳だったんですよ、アン・バンクロフトさんは。
(ちなみにダスティン・ホフマンは29歳、キャサリン・ロスは26歳だったのです)。
驚きですよね、あの貫禄の演技力には驚きです。

映画の中にはいろんな実験がなされています。
今見ると「こんなことをこの頃からやってたんだ」と感心もします。

問題のラストシーン。
結婚式の最中に教会で花嫁を奪うシーンは有名ですよね。
そのあと、通りかかったバスに、飛び乗ったふたりは最後尾にかけて、
「やった!!ざまぁみろ」というような顔をして笑っていますが、
数十秒後、マジな顔に戻り、不安そうな顔をし出します。

「これはふたりの未来を暗示している」という解釈が主流ですが、
マイク・ニコルズ監督がわざと「カット!!」の声をかけずに、そのまま廻していたんだそうです。
だから、本当に不安な顔なんですよね。

ともあれ、ロビンソン夫人に扮したA・バンクロフトの存在感は強烈。
『サウンド・オブ・サイレンス』、『ミセス・ロビンソン』などサイモン&ガーファンクルの唄う
メロディもいい雰囲気で、60年代後半に青春を過ごした人間にはバイブルのような作品ですね。
★★★★



『もらとりあむタマ子』


2013年 日本映画第9位 ビターズ・エンド 78分 カラー
監督=山下敦弘、脚本=向井康介、音楽=池永正二
出演=前田敦子、康すおん、伊東清矢、中村久美、富田靖子

(ストーリー)
東京の大学を出たものの、父親がひとりで暮らす甲府の実家に戻ってきて就職もせず、
家業も手伝わず、ただひたすらに食っちゃ寝の毎日を送る23歳のタマ子が、
やがてわずかな一歩を踏み出すまでの1年を追う。

(鑑賞)
モラトリアムって一体どういう意味なのでしょうか。
〈モラトリアムの意味〉辞書を引くと、モラトリアム(moratorium)の英語としての意味には、
「停止」「支払猶予」が最初に出て来ます。借金などの支払猶予のことです。
この意味から転じて、「肉体的には大人ではあるが、社会的義務や責任を課せられない猶予の期間」
という意味に使われるようです。

けだるいムードで始まるこの映画は、これというドラマも何もほとんど起こらないまま、
秋、冬、春、夏と甲府の四季をバックに進んで行きます。

前田敦子さんの演技は、「難しかった」と言わしめているものの、
前田の元々持つ、けだるさ、なげやりさがよく出ていて、好演といえます。

父親の康すおんさんの演技、抜群によく、
お久しぶりな、富田靖子さん、大人になってきれいになっていますね。驚きましたよ。

たくさん食べる映画です。
こういう映画って撮るのが難しいそうです。
山下監督の手腕は、ますますなかなかの冴えを見せてきましたね。
★★★★