一語一映Ⅲ

高知市の美容室リグレッタの八木勝二が、映画や本のこと、ランチなど綴ります。

昭和の映画レビュー 「クリスマスツリー」「マーフィの戦い」「獣の戯れ」


★★★★★・・・なにを置いてもレンタル店へ走ろう ←新設しました
★★★★・・・絶対オススメ 
★★★・・・一見の価値あり
★★・・・悪くはないけれど・・ 
★・・・私は薦めない 
☆・・・おまけ

※本編の内容に触れる個所がありますから、観られていない方は、ご注意ください。


『クリスマスツリー』


1969年の映画で、1970年の正月映画でした。
中学時代に一度映画館で見て、今回再見するまで、ずっと偶発的難病モノだと思っていました。
この愛くるしいブルック・フラーくんが、白血病にかかってクリスマスを楽しみにしていたのに
その手前で死んでしまうという悲しい映画だと思っていましたら、かまり違っていました。

まず、このフラーくん、健康そのものだったのです。
パリの寄宿舎で勉強しているフラーくんは、パパと再婚相手の女性と夏休みを過ごすのです。
その夏休みの避暑で訪れたコルシカ島でバカンスをしているときに、事故に遭うのですよ。
なんと、水爆実験に巻き込まれてが原因の白血病で不治の病だということでした。
一緒にいた父親はそのとき、海中にいて被爆しなかったわけです。

クリスマスまで生きられるか、少年が大好きな狼を、
それまで仕事一筋で子どもを放っておいたウィリアム・ホールデンが動物園へ
盗みに行くシーンが傑作でした。

テレンス・ヤング監督、
「007」シリーズの最初2作が大ヒットし、「サンダーボール作戦」でも監督、
その後「暗くなるまで待って」で手腕を発揮し、「夜の訪問者」「バラキ」「アマゾネス」と続きます。
巨匠ではないけど、一所懸命な作品が多いですね。
「レッド・サン」もそうでしたが、フランス、イタリア、イギリスで撮った映画が多く、
アメリカ映画は「暗くなるまで待って」ぐらいなんですよ。
ケンブリッジ出身なんですって。   ★★★



『マーフィの戦い』


1971年のイギリス映画です。
監督・ピーター・イェーツ。代表作は「ブリット」(1968)、「ジョンとメリー」(1969)、
「またまたおかしな大追跡」(1974)、「ザ・ディープ」 (1977)、「ヤング・ゼネレーション」(1979)
主演は、ピーター・オトゥール。「アラビアのロレンス」でデビューし、アカデミー賞主演男優賞に
7度もノミネートされ、無冠に終わりかけ、先にアカデミー名誉賞をとってしまい、
その後に「ヴィーナス」で、8回目の主演男優賞候補になったという逸話の持ち主です。

僕が「アラビアのロレンス」の次に好きなオトゥール映画です。
なにせ、第二次大戦中の末期、南米で商船をドイツ軍に沈められ、
一人生き残ったオトゥールが、終戦の報を聞きながらも、
複葉機で、石油会社の作業船で、Uボートを沈めに行き、一人で沈没させてしまうという
狂気の男の映画です。こういう男を演じたときの彼の眼は恐ろしいほど澄んでいます。

レンタルではめったに見つからないとは思いますが、戦争映画でも異色の佳作です。
★★★★


『獣の戯れ』


正直、間違えてレンタルしたんです。
「しとやかな獣」と。主演が一緒の若尾文子さんだったから、映画がほぼ終わるまで
気がつきませんでした。最初のテロップで監督名が「?」だったくらいで。

原作が三島由紀夫の文学ですから、いわゆる文芸なのですが、
監督がよくないとこんなに役者も栄えず、わけのわからない映画になるんだなという
ことを再認識されられた映画でした。

主人公の男性の独りよがりな自己表現は、途中から訳がわからない行動となり
説明もつきませんから、見ていても高揚感がないんですよ。
ちゃんと、近く「しとやかな獣」で、お口直ししましょう。★★