一語一映Ⅲ

高知市の美容室リグレッタの八木勝二が、映画や本のこと、ランチなど綴ります。

昭和の映画レビュー 「独立愚連隊」「愛のお荷物」「ひとり狼」

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★★★★★・・・なにを置いてもレンタル店へ走ろう ←新設しました
★★★★・・・絶対オススメ 
★★★・・・一見の価値あり
★★・・・悪くはないけれど・・ 
★・・・私は薦めない 
☆・・・おまけ

※本編の内容に触れる個所がありますから、観られていない方は、ご注意ください。


【独立愚連隊】


(ストーリー)第二次大戦も末期、北支戦線の山岳地帯で敵と対峙している日本軍に、独立愚連隊と呼ばれる小哨隊があった。正式には独立第九〇小哨だが、各隊のクズばかり集めて作った警備隊なので、この名称があった。独立愚連隊に行くには、敵の出没する危険な丘陵地帯を行かねばならない。この死地へ、新聞記者の腕章を巻き、戦闘帽に中国服姿の男が馬を走らせていた。大久保という元軍曹だが、愚連隊小哨長をしていた弟の死因を究明するために、入院中の北京の病院を脱走して来たのだ。従軍記者荒木となのっていた。彼には弟が交戦中に情婦と心中したという発表は信じられなかった。彼は生前弟が使用していた居室から、弟の死因となったピストルの弾を発見した。心中なら二発ですむわけだが、弾はいくつも壁にくいこんでいた。部屋で死んだのだから、敵ではなく部隊内の誰かが犯人だ。戦況はすでに破局に達していた。死んだ梨花の妹でヤン小紅という娘が現われた。荒木は、彼女から姉の形見だという紙片を見せてもらった。大久保見習士官が死ぬ直前に、部隊長宛に綴った意見具申書だった。橋本中尉の不正を列挙し、隊の軍規是正を望むものだった。橋本中尉は、自分の不正がばれるのを恐れて大久保を殺し、心中の汚名を着せたのだ。しかし、荒木の身許が橋本にバレた。荒木の北京時代の恋人で、今は将軍廟で慰安婦をしているトミが荒木を追って来た。そして彼女は将軍廟の橋本からかかって来た電話に出て、荒木の本名を口走ってしまったのだ。将軍廟に向うトミと荒木を乗せたトラックは「途中で敵の砲撃を受け、トミは死んだ。荒木も将軍廟に着くと営倉に投げこまれた。しかし、脱出して橋本を撃った。−−敵の大軍が押し入った。しかし、荒木は不思議に死ななかった。彼は馬賊の群に投じ、はるか地平線の彼方に消えて行った。

(感想)こんな戦争映画があったんだ、とまずは驚き。
戦争映画とよりは舞台は第二次世界大戦中の中国ではあっても、
ほぼマカロニウェスタン的西部劇に近い感覚ですね。
主演の佐藤允(まこと)の面構えが日本人離れしていてよろしい。
「チャトズ・ランド」でインディアンを演じたブロンソンにも似て、痛快無比。
こんな破天荒な作品、大映だったら絶対2作でなくシリーズ化ですよね。
 ★★★

1959年 東宝 108分 監督・岡本喜八、主演・佐藤允、中谷一郎


【愛のお荷物】


(ストーリー)江戸時代からの薬種問屋で有名な新木長春丸本舗の当主新木錠三郎は、時の政府の厚生大臣で、野党の人口問題に関する追求を軽くさばいて、「受胎調節相談所設置法案」等の術策で人口の増加を食い止めようと考えていた。ところが彼が議会の厚生委員会で人口軽減に関する大演説を行っている頃、四十八歳になる夫人の蘭子さんは妊娠して産婦人科に行っていたのである。そればかりか、新木家の長男錠太郎君はかねてから秘かに恋愛中だった父の秘書五代冴子さんから愛のお荷物ができたらしいと打明けられていた。新木氏は政治的考慮と、末娘さくらの結婚式が近いとの理由で蘭子夫人に人工流産をすすめようとする。さくらは、そんなゴタゴタで許婚の出羽小路君との結婚式が遅れることを何故か困っている様子だったが、実は近づく結婚が待ち切れず出羽小路君との間に愛のお荷物が出来てしまっていたのだ。而も錠太郎は新木家を飛び出して新生活に入ってしまう。その上驚いたことには新木家の御隠居箱根の別荘に住む錠造翁までが若い茶飲み友達との間にお荷物ができかねない有様である。折から錠三郎は京都へ遊説に行き、かつての恋人貝田そめに訪問され、彼女との間に出来た子供の存在を知らされて愕然となる。斯くして新木家の人口は一躍倍以上にはね上ることになった。女中のお照さんと支配人の山口さんとの間にも愛の結晶ができたらしい。さくらの結婚式は早められ、錠太郎達の結婚も認められた。そして新木家の御婦人たちは一斉にお芽出たの日を待つばかりとなったが、さて日本の人口問題はどうなるやら−−。

(感想)川島雄三監督作品です。「愛のお荷物」とは、ベビーブームで人口急増で困っている
日本のベビーラッシュのことを皮肉ったものです。
得の総理大臣の元には、48歳の妻に、息子と秘書の間に、家のお手伝いさんに、
結婚を控えた娘にも、そして過去の恋人との間に、成人した子供が・・・

畳み掛けるスピードと矢継ぎ早に繰り出されるユーモアとエピソード。
これが川島節なのだと実感。「幕末太陽伝」もも一度見直してみよう。
全てはハッピーエンドにも、心地よさがありますね。
 ★★★

1955年 日活 110分 監督・川島雄三、主演・山村 聡、三橋達也  

【ひとり狼】


(ストーリー)これは中年のやくざ孫八が語る話である。孫八はひょんなことから、追分の伊三蔵と知り合った。同じやくざだが、孫八は伊三蔵という人間に、一目会った時から興味を覚えた。人斬り伊三と呼ばれる兇状持ちの上、親分なしの子分なし、まったくの一匹狼である伊三蔵には、何か暗い影があるのだが、孫八には“本もののやくざ”とうつった。旅から旅への渡り鳥である二人が、再び会ったのは上州の坂本宿。たまたま孫八はやくざになりたての半次と共にある一家に草鞋を脱いだが、そこに伊三蔵も客になっていたのだ。伊三蔵は博奕にも強く、剣の腕も確かで、追われる者特有の油断のない身構えが周囲の者を威圧していた。半次はそんな伊三蔵にすっかり、魅せられてしまった。翌年の春、孫八は三州のある花会で伊三蔵と三度目の出合いをした。この土地の人間と伊三蔵は、何か因縁があるようだった。小料理屋の酌婦お沢は伊三蔵のかつての女だったという。間もなく分ったことだが、伊三蔵は、郷士上田家の奉公人だった。それが跡取娘由乃と愛しあい、由乃が身篭るまでになったが二人の関係が知れると、酷い別れ方をさせられたのだ。しかも、由乃の従兄平沢は、伊三蔵を斬ろうとさえしたのだ。こうなると、由乃もあえて駆落ちしようとはしなかった。それ以来、伊三蔵は剣の腕を磨き、女も信用しなくなり、兇状持ちのやくざになっていった。伊三蔵が再びこの土地に姿を現わしたのは、由乃と子供の由乃助が幸福に暮しているかどうか見たいためだったのだ。今、由乃は仕立物をしながら由之助を学者にするべく、ひとり身を守っていた。だが、平沢は、再び伊三蔵を斬ろうと計り、由乃と由之助を人質にして伊三蔵をおびき出した。悽惨な戦いだった。伊三蔵が平沢を斬ったとき、自分自身も重傷を負っていた。しかし、伊三蔵は誰の手もかりず、黙って歩き去っていった。それ以来、孫八は伊三蔵に会っていない。だが、孫八は、伊三蔵が生きていて、どこか旅の空を流れているに違いない、そう最後の言葉を結んだ。

(感想)ニヒルな渡り鳥のやくざモノ追分の伊三蔵を市川雷蔵が演じています。
一宿を共にしたやくざ・上松の孫八に長門勇、ま、娯楽時代劇ですが陰のある一匹狼ものですね。
ストーリーは上にありますように、全然複雑ではありません。
見ているうちに理解できます。
引き裂かれた愛ゆえ、やくざモノと、小料理屋の酌婦として身をやつしている。
雷蔵の時代劇には、ほぼハッピーエンドはない。
復讐を遂げても、幸せはやってこない。
時代がそういうヒーローを求めていたのだろうか?
★★★

1968年 大映 83分 監督・池広一夫、主演・市川雷蔵、長門勇、小川真由美