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一語一映Ⅲ

高知市の美容室リグレッタの八木勝二が、映画や本のこと、ランチなど綴ります。

キネマ旬報ベストテン鑑賞レビュー 「浮雲」と「浮き雲」

★★★★★・・・なにを置いてもレンタル店へ走ろう ←新設しました
★★★★・・・絶対オススメ 
★★★・・・一見の価値あり
★★・・・悪くはないけれど・・ 
★・・・私は薦めない 
☆・・・おまけ

※本編の内容に触れる個所がありますから、観られていない方は、ご注意ください。


『浮雲』


1955年日本映画第1位、主演女優賞、主演男優賞受賞、東宝製作、124分 モノクロ
監督・成瀬巳喜男、脚本・水木洋子、主演・高峰秀子、森雅之、岡田茉莉子

1999年のキネマ旬報で「映画人が選ぶオールタイムベスト10」で日本映画2位になった名作です。
実は初めて見た時は、なんだこのだらしない男と女のだらだら恋愛は?
と正直思いましたよ。なんでこんなのが名作なんだと。

2度目は少し違いました。
ストーリーだけを追わずに、時代背景や、画面から醸し出される情感などを追っていくと
これはすごい映画だと思い直すことになりました。

3度目は映画館(あたご劇場の成瀬監督特集です)のスクリーンで。
これはきましたね。
ストーリーは頭に入っていますから、アングル、つなぎ、演技、陰影などゆっくり味わえました。
高峰秀子さんは「二十四の瞳」で大石先生をやったから、
そういう女優さんだろうと思っていたら、激しい女や耐える女や、いろんな女を
演じられる方ですから、このだらしない男から離れようにも離れられない
自分をもてない女という難しい役を見事に演じきっていましたし、
相手役の森雅之さんも、身勝手で女にもだらしないのに、未練たらたらの
情けない役を体現していましたね。

俳優さんの演技もそうですが、やはり、脚本と監督。
この二人がしっかりすると名作は生まれるんですね。
「浮雲」の世界は、60年経った今でも、あり得る男女関係を描き切っています。★★★★★



『浮き雲』


1996年外国映画第3位、フィンランド映画 96分 カラー
監督・脚本・アキ・カウリスマキ、主演・カティ・オウティネン、カリ・ヴァーナネン

めったに見られないフィンランド映画ですが、アキ監督はデビュー作から好きでした。
ただ映画館に高知ではかからないんですよ。
DVDでようやく見ました。

市電の運転手・ラウリと、老舗レストランの給仕長・イロナの夫婦の失業から始まる
これでもかというほど、不幸が続きまくる映画です。その様はコメディ映画かと思うぐらい・・・。

ラウリの仕事が決まる⇒健康診断で、耳の難聴を指摘され、仕事は破談、免許までなくす。
イロナが別の安レストランに採用⇒そのオーナーが税務署に捕まり、給料を不払い
それを取り立てに行ったラウリは袋叩きにあって、大怪我という風に。

淡々とした画面、動かないカメラ、
感情をアップでゴマかさない演劇のようなカット割り。
カウリスマキ節とでも言えるテンポで淡々と映画は進みます。

以前の仲間で開業しようよ、という話がまとまり、資金の手立てをするために
車を売り、そのカネでカジノへ行くものの、全財産をすってしまう、こんな悲惨な映画がありますか?

でも、登場人物はそんなに悲観的ではないのです。
金もないのに「なんとかなるさ」的な救いがあるんです。

もとオーナーが資金を調達して、レストランを再開し、オープンにこぎつけたはいいが
客がひとりも入らない、でもラストには絶望の中の光が見えて。
例え様のない余韻が残ります。ポスターはラストシーンの夫婦が「浮き雲」を眺めるシーンです。
★★★★


くしくもそっくりなタイトルの2本ですが、先の名画「浮雲」があったから、あとのは「浮き雲」と
「き」を入れたんでしょうね。ともに名作です。
そして、笑顔が映画の中にひとつもない、冷静な映画でした。
二人の監督―成瀬監督と、カウリスマキ監督の映画をしばらく見てみたくなりました。