一語一映Ⅲ

高知市の美容室リグレッタの八木勝二が、映画や本のこと、ランチなど綴ります。

キネマ旬報ベストテン鑑賞レビュー 「キクとイサム」と「博多っ子純情」

★★★★★・・・なにを置いてもレンタル店へ走ろう ←新設しました
★★★★・・・絶対オススメ 
★★★・・・一見の価値あり
★★・・・悪くはないけれど・・ 
★・・・私は薦めない 
☆・・・おまけ

※本編の内容に触れる個所がありますから、観られていない方は、ご注意ください。


『キクとイサム』


1959年日本映画第1位。配給・松竹。117分、モノクロ。
監督・今井正 脚本・水木洋子 出演・北林谷栄、高橋エミ子、奥の山ジョージ

独立プロ運動から生まれた名作です。
この頃の、監督・今井正(「ひめゆりの塔」「米」)、脚本・水木洋子(「おとうと」「浮雲」)
のコンビなら1位を取って当然というタッグの二人よる作品です。

戦後10数年後の会津磐梯山の麓の村の物語です。
黒人とのハーフに生まれた小6のキクと小4のイサムは、祖母との3人で暮らしています。
貧しいため、町へ野菜を売りに行ったりして、生計を立てている。
村では、貧乏なため、差別的な扱いを受けることはたまにだったが、
町へ出ると好奇の目にさらされたり、さげすまれたりしますが、
元気に生きる二人なのでした。

町の医師から、黒人とのハーフはいじめがひどいので、アメリカへ里子に出すように
進められ、キクとイサムのどちらを出すかでおばぁは悩みます。

町の祭りで、「黒ン坊」とさげすまれ、蛮行に走るイサムには、
こんなとこもう嫌だ、アメリカへでもいってやる、という気持ちが芽生えだします。
そして、貰い手が決まり、いよいよ別れの日です。
決心していたイサムでも、姉キクと別れるのがつらくなり、汽車から飛び出ようとします。

残されたおばぁとキク。
いろんな苦難もありますが、けなげに元気に生きていくのでした。

配役の姉弟二人がベストキャスティング。
その頃から、おばあさん役が最高だった北林さんの演技もまた最高です。
こんな素朴な映画を淡々と綴る脚本・監督にも大賞賛。★★★★


『博多っ子純情』


1978年日本映画第10位。松竹。94分、カラー。
監督・曽根中生、脚本・石森史郎、長谷川法世、出演・光石研、内田朝雄、松本ちえ子

漫画アクションに10年以上連載された、同名の連載漫画の映画化。
僕の大学生時代の頃に同化し、成長していく男の過程を博多―東京と舞台を変えながら
自伝のごとく綴っていく漫画でした。基本1話完結形式の連続モノ。
つまり、1回ごとにおちがあるというわけです。
1回ごとに博多弁のタイトルがついており、「しゃからしか」(やかましい)なんて言葉は
今でも覚えています。

映画は94分とその原作のごく一部を描いていますが、
実に原作のいいところをうまく抑えており、主人公六平の青春が性の目覚めと共に
さわやかに描かれているのが魅力です。

そして、博多もんの男気の映画でもありました。
ラストに中学のバンカラ同士の決闘シーンになるのですが、
それを収めるために六平がとった行動と、そのときもらした小便がとても印象に残る
小品ですが、青春映画の逸品ですよ。 

思いで映画館のコーナーにあります。★★★★