一語一映Ⅲ

高知市の美容室リグレッタの八木勝二が、映画や本のこと、ランチなど綴ります。

昭和の映画レビュー 「テキサスの五人の仲間」「娘・妻・母」「くちづけ」


★★★★★・・・なにを置いてもレンタル店へ走ろう ←新設しました
★★★★・・・絶対オススメ 
★★★・・・一見の価値あり
★★・・・悪くはないけれど・・ 
★・・・私は薦めない 
☆・・・おまけ

※本編の内容に触れる個所がありますから、観られていない方は、ご注意ください。



『テキサスの五人の仲間』


何の予備知識もなく見てしまい、見事にだまされてスカッとさわやかな映画を久しぶりに見ました。
「スティング」「オーシャンズ11」「マーヴェリック」「デストラップ死の罠」などの「だましだまされ映画」
の中でも1、2を争う出来の作品でした。
単純にヘンリー・フォンダ主演の西部劇としてしか見ていなかったので、よけい驚かされましたよ。

年に一度、全財産を賭けてやるポーカーの勝負の日、開拓牧場を開くために
好きなギャンブルもやめて、こつこつ貯めたお金を持って、牧場へ向かう途中のフォンダ親子が
馬車の修理に街に寄るところから、映画が始まります。

ギャンブル好きの虫が鎌首をもたげて来てしまい、
ついに牧場を買う金の4000ドルにも手をつけてしまう。
そして最後の賭けになったとき、彼の手に「ノーチェンジ」のすごい手が入る。
興奮のあまり、彼は持病の心臓発作を起こしてしまい、全くほーカーに無知な妻が
彼の変わりにやることに・・・。

掛け金を吊り上げられ、絶体絶命のピンチに彼女がとった行動は、
「カードの役を担保に銀行に融資」をしてもらうこと。
ここらがスリリングなんです。
ポール・ニューマン夫人のジョアン・ウッドワードの好演です。

僕の観た中では、「スティング」と東西の横綱を張るだけの、だまし映画の傑作といえるでしょう。
★★★★



『娘・妻・母』


名匠・成瀬巳喜男監督の1961年のカラー撮影の映画です。
成瀬といえば、女性映画なんですが、この作品には「娘・妻・母」という女の立場の違いを
見事に対比させた絡みが、小津安二郎映画のごとくつづられています。

配役もすごいんです。
母に、三益愛子と杉村春子、
妻に、高峰秀子、原節子、草笛光子
娘に、団玲子、という布陣です。

男優もすごいですよ。
森雅之、小泉博、宝田明、仲代達矢、こんなオールスターキャストでも正月映画でもなんともない。
それに、上原謙、加藤大介、笠智衆さんがごく脇役で出ているという豪華さ。

成瀬監督ほどの巨匠でないと集まらなかったでしょうね、こんなメンバーは。

ドラマは父親が亡くなったことから端を発して、
二男三女の家族の葛藤と崩壊がホームドラマ的に描かれるというものです。
いつもの成瀬節というよりは、小津さんの世界に近いホームドラマです。

でも、「やるせなきお」と呼ばれた監督の作品、軽く笑いだけでは済まされません。
当時の家族の問題・課題が次から次へと、出てくる、描かれる・・・洪水です。

遺産相続と親を誰が見るかという、今でもある兄弟の問題、親子の問題を
淡々と描いていくところに、脚本のすごさがありますね。

成瀬監督にしばらくはまりそうです。ラストシーンがあまりにも意外で印象的です。★★★★


『くちづけ』


こちらは、1957年の作品です。
同じタイトルで最近映画がありましたが、それとは無関係な映画です。

大映を中心に「女の情念」を主に若尾文子を主演につづった監督・増村保造のデビュー作です。
デビュー作には、その監督の全てが凝縮されているといいますが、
この作品の場合はどうなんでしょうか?

後の名作群とは、かなり毛色が違い、太陽族のはやった頃の彼なりの若者像を
描いたという感じの映画です。

主演には、原作の川口松太郎さんの長男・川口浩と、野添ひとみが抜擢されています。
74分しかない映画なんですが、テンポがものすごくいいんですよ。
ボーイ・ミーツ・ガールな物語なんですが、フランスのヌーベル・バーグにも似て
シャイだけどかっこいい、という感じなんです。

野添ひとみのアルバイトなんて、ヌードモデルですもの。
驚きますよ。それそのもののシーンは流石に時代柄ないのですが、
ヌードの絵だけは出てきます。

太陽族のようにかっこつけず、等身大の青春の出会い、と葛藤。
書けば少しのストーリーを当時の風俗に絡めて、ハイテンポで
二人のせりふのやり取りで、描くのであっという間です。   ★★★